日本一の弁護士を目指す法律系ブログ

法律や昨今の弁護士事情について勝手気ままに書き綴る弁護士を目指す男のブログだと思う。

許せない『労災隠し』には告訴で応戦!

建設業や土木業をしている人なら一度は怪我をしたことがあるでしょう。そんな時、職場から「病院代と給料は出すから労災にしないでくれ。」などと言われる経験をした人も少なくないはずです。

 

ある墓石店で働いていた20歳代の男性が、仕事中に使用していた重機が倒れて足を複雑骨折する怪我を負いました。

 

実際には免許が必要な重機を無免許で運転するよう命令されて、安全に使用する指導もない状態でした。

 

男性は2ヶ月も入院生活を送りましたが、職場の責任者から「労災だとは言うな。元請会社からの仕事がなくなるからな!」と言われ、治療費も給料の補償ももらえませんでした。

 

職場の対応に立腹した男性は法律に明るい知り合いに相談して、告訴状を作成してもらい、労働基準監督署に告訴しました。

 

労働基準監督署は警察と同じく専門的な分野において捜査権を持つ『特別司法警察職員』です。

 


捜査機関は、要件を満たしている告訴は受理しなくてはならず、受理した告訴は必ず送検(法律上は『送付』と明記されている)する義務を負います。仮に捜査中に告訴の取り下げがあっても、捜査機関は送検しなくてはならないのです。

 

 

途中、職場や元請の会社から「告訴は取り下げろ。」と圧力もありましたが、男性は取り下げませんでした。

 

男性が頑なに告訴を取り下げなかったことから「示談金を用意するから告訴を取り下げてくれ。」と元請会社の取締役が家に訪ねて来ましたが、これも男性は断りました。
この男性としては、もはや金銭で片付く話ではなくなっていたのです。

 

毎日働いていた会社からの裏切り、圧力、苦しい生活の中で医療費や生活費を工面してくれた妻や親類への想いが「会社を断罪する。」という強固な意志へと変わっていたのです。


結果、労災隠しで会社は罰を受けました。

 

刑罰よりも痛かったのは「あの会社は労災隠しで罰を受けた」と業界で噂が広まったことでしょう。

 


男性を直接雇っていた会社は下請けの小さな会社だったので、労災隠しの噂が広まったことが大打撃になり仕事の依頼が激減し、社長は逃亡生活を送るようになりました。
元請の会社も、ホームページに「労災隠しをしたのですか?」などと書き込まれ、収束作業に翻弄されていました。

 

 

単に労働基準監督署に相談した程度では「捜査」ではなく「調査」で終わり、処罰に至らないこともあります。

 

労働基準監督署は司法と行政の両面的な性格を持ち、指導を行う立場からどちらかと言えば行政的な役割が強い機関です。

 


相談程度では「補償もされるようだし、もういいんじゃないの?」と仲介されて、なだめられることもしばしばです。

 


悪質な会社を断罪するには、捜査機関の力を発動させる告訴が非常に有効だと言えるでしょう。