どんな財産でも相続されるわけではない
人が亡くなると相続が発生するってだれでも知っていますよね。どんな人でも何か財産はあるものですから、亡くなった人の相続人は何か財産は受け継ぐものです。民法では相続が発生するとすべての権利義務を受け継ぐと書いてあるけど、これはあくまでも原則であって例外もあるのです。
法律の世界ではこの原則と例外というのが規定されていることがよくあります。原則だけでは通用しない場面があるのですから、それに対処できるように例外を設けているんですね。
それで相続の場合は、「被相続人の一身に専属するもの」「祭祀財産」「相続人が固有に取得する権利」は相続人へ引き継がれないと規定されているんです。
これは民法の条文に書かれている表現そのままだからわかりにくいと思います。法律の条文は難解な用語を使って表現されているので理解しにくいのです。そこで具体的に説明してみますね。
まず「被相続人の一身に専属するもの」ですが、借地権や借家権などがこれに該当します。例えば家を借りていた人が亡くなったからといって、その相続人が当然にその家に住む権利を引き継げるわけではないのです。
亡くなった方と大家さんが家を貸すという契約をしていたにすぎません。土地を借りる権利である借地権も同じです。最高裁判所は借地権や借家権は相続によって当然には引き継げないと判断しています。
たしかに相続人が亡くなった人と別居している場合であれば問題はないのですが、同居している内縁の配偶者(妻や夫)や事実上の養子がいる場合には問題となります。
家を借りていた人が亡くなったからといって、同居人を追い出してしまうというのは酷い話ですよね。そこで、例外として住めるようにしようという法律があるのです。それが借地借家法36条で、借地人・借家人の権利義務を引き継ぐことができるとされています。
法律というのは形式的に適用されるのが原則ですが、それだけでは困る人が出る場合には救済する方法が設けられているんです。