日本一の弁護士を目指す法律系ブログ

法律や昨今の弁護士事情について勝手気ままに書き綴る弁護士を目指す男のブログだと思う。

製造物責任法(PL法)とその周辺

TPP対応などで、農水産業やその加工物、機械類等では、今後輸出入が増えることなどを見越しての、海外のみならず、これまで以上に国内体制での良質なサービスによる、品質確保のための、社内制度整備、条文等ほかのビジネス面でのテキスト整備等体制づくりが急がれています。

 

今回はその中でも「改めて見直されることも多い、製造物責任法(PL法)」について基本的項目を、ご紹介します。

 


■製造物責任法(PL法)とは?

海外等への輸出、並びに海外製品などの家電、車両や軽車両、移動器具やスポーツ用品などの輸出が増え、世界的にも日本たたきが強まっており、主に欧米で「通常想定しないような使用法による事故や損壊などでの訴訟が、外国製品のみならず自国製品などについても」多くあったこと。

 

また日本においては、輸入軽車両や家具などの、通常の使用方法内においての、突然の損壊などによるけがや事故、重傷などに至るケースが相次いだために、対外的圧力による制度準備と、防御的制度準備、また粗雑すぎる製品に対しての製造者側の売り逃げなどを防止する意味での制度の整備などの観点から、1994年、本法が整備されました。

 

ニュースなどではPL法と呼ばれることも多くありますが、この考え方のもとになる米国などの「product liability(=製造物責任)」から、PL法と呼ばれています。

 

PL法整備前の日本では、通常、企業の生産物についての性能面からの訴訟提起とそこからの賠償というのが難しく、民法の不法行為法における通常の展開通り、

・まず事件やその現況、かかる人物など
・通常利用である
・その物品の状況で、それ以外に原因が考えられない

といった流れとして提起し、この3つ目の部分の立証のための関連物品の性能テストや設計他、通常利用が想定される負荷その他の条件であったかなどの計測などが多く必要で、被害に遭った側の説明責任とされる領域が、「製品によってはかなり膨大」でした。

 

その多くにおいて、製造者のみが知りえる情報が多いこと、また製造業者の方が関連知識や弁護等の体制が被害者に比べても大きく、「より過失の証明が困難であるため」に賠償等を得ることが難しいといった問題点から、本法で「製造者の過失を要件とせず、製造物に欠陥がある」ことを要件として、損害賠償責任を追及しやすくしたものでした。

 

法理上では、本法制定前は、「民法上では過失責任の原則」を採用していることを前提として、「欠陥が存在することをもって製造者の過失を事実上推定」する方法で運用されていました。比較的安価な製品の域内流通などもあった、EC諸国の動きなどから、日本でも1994年に制定されたものです。

 

■制定により大きく変わった点

これまで玩具や衣類、軽車両や、情報通信機材、電化製品のなかで電池タイプなどのもの他では、大きなトラブルがあっても、その原因などの特定が難しい、あるいは責任追及をしたくても業者側が実在しない、あるいは業者に資力がないといった件などもありました。

 

また、これら製品を労働力の安価な海外で製造させ、販売契約に際しては海外会社をその実態としてたてて、事故があった際に計画的に組織を解体するなどの件も有、これらの法整備により、その求償可能である点、製造業者(表示製造業者、実質的製造業者)、販売業者からなる「製造業者等が負う責任が、大きく明文化されている」ことから、安易な業者の社会からの実質排除につながりました。

 

具体的には小規模業者が輸入する玩具類などは、細かな原料制約がありますが、これまでは販売後問題がみつかっても、そもそもそれら製品には販売者や製造者表示がないといったものも見られましたが、現在では業界や卸ぐるみ、中間業者も責任を負うことなどから、実質的にチェックが増えたことにより、それら原料安全性や形状安全性などの実効面部分が確保されています。

 

また、本法でいう製造物の対象は、「製造又は加工された動産」2条1項であり、ハードウェア用ドライバやソフトウェア等はそのソースプログラム単独では、対象とはなっていません。ですが、IT関連機器などで、プログラムを組み込んだ状態で販売されている機材などは、本法の対象となり、その点でも販売に介在した業者も責任追及されることがあることから、一定以上の水準の製品が市中に「多く」並ぶことにも寄与しています。

 

また、本法での損害賠償請求権は、原則、損害及び賠償義務者を知ったときから3年の消滅時効、もしくは製造物を引渡したときから10年の除斥期間により消滅するという規定がありますが、住居設備等で長期にわたって使用される製品などについての事故などはこれらの対象の外となるかといった議論や事件(2006年パロマ湯沸かし器)などもあり、

 

一部分類の製品などについては、「消費生活用製品安全法」等他法整備により、これまでよりも強固な生命の安全などに資する制度整備も進みました。


■重要な製造物に関する問題や事例
2008年、玩具においては興味深い判例がありました。ガチャガチャとよばれるカプセル玩具を誤飲した子供が窒息死した事故につき「こどもの玩具故、想定外の使用方法による事故に対応した設計をすべき」という趣旨で、その製造業者に製造物責任を認めた事例。

 

また2010年の加水分解コムギを利用した化粧せっけんによる重篤な大規模アレルギーの発症などについても、製造開発時に予見できなかったという主張を覆した件などがあります。

 

もともと製造物にかかる制限や許認可、認証自体が、単独の官庁の指導や法制度の下などによるものではないこともありますが、係争等の進行上では本法にもとづく考えかたを下にして、各法の整備のための機運が高まり、それをおって整備されるということが、約20年たち、非常に多くありました。

 

日本においては、販売された製造物に表示されている者やその販売者に対する責任追及などは想定されたものでしたが、旧来よりの市中でのそれら表示がない場合の求償にかんして、「明らかに明文化されて、販売者など、被害者側が最後にその取扱者として知りえる者に求償出来る」といった条文等はなく、これらを実務上どのように消費者にとって実りあるものにしていくかは、課題として大きく残っています。


■これらの事例などを受けて、省庁などが整備されたり、あるいは経産省等だけではない各方面からの法整備や体制構築も進んでいます。

 

「通常の使用方法においても、設計や製造時に機能や効果、副作用上、予見されなかった」といった件についても、取りこぼすことのないようなあらゆる仕組みの整備は、最近では、エアバッグ事件や発煙筒、ブレーキ、自転車、幼児用椅子他、いろいろな製品で見られます。

 

市場に一定以上の基準の製品が確保できるために、消費者側を向いただけでなく、その製造販売業者にむけたアピールや実質的な制限となる法整備と、法廷上での判例の積み重ねによる維持の両面が必要な分野であります。かつ、問題が一度起きてしまえば、賠償規模は広告、回収等の作業もふくめ大がかりかつ長期となるものでもあり、事後対応ではなくスピードをもったアプローチは、企業側だけでなく、法制定や運用する側にも必要です。