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海外取引の基本契約条項や形式について

TPP適用のある、あるいは今後予想される、業種や製品取扱者のみならず、それらによる各国関連法の整備や体系化、また各機関などの整合性や判断基準すりあわせなどが徐々に進展するとみられる、海外との売買契約や製造、技術提携関連の契約条項見直しが、現在各社で急激に進んでいるところです。

 

これまで以上に、関係分野や権利関係など、また新設や改定の各製品や分野別基準といった部分で、これまで「あいまいでも取引ができていた」=「その分生産体制などが安価に済んだ、各国取引先」についても、細部にわたり、契約条項の整備が必要になっています。

 

大手各社では、法務や技術の専門職員などをつかった、大型見直しなどが進んでいますが、中小事業者などでは、とくに、顧問先などからいわれなければ、対応変更の必要があるかさえ分からないものです。

 

そこで今回は、ごく基本の契約条項(一般条項)と、それらの項目について、おおまかにご紹介します。


■英文契約書での基本構造
1:定義(Definitions)
2:表明保証(Representations and Warranties)
3:秘密保持義務(Confidentiality)
4:契約期間(Term)と契約関係の終了(Termination)
5:救済(Remedies)
6:不可抗力(Force Majeure)
7:譲渡(Assignment)
8:税金及び支払(Tax and Payment)
9:権利の不放棄(No-Waiver)
10:通知(Notices)
11:分離独立条項(Severability)
12:紛争解決(Dispute Resolution)
13:準拠法(Governing Law)
14:完全合意条項(Entire Agreement)と契約の修正(Modification)
15:免責事項(Disclaimer)と 責任の制限(Limitation of Liability)

 

売買や技術提携、開発生産などにおいては、通常これらの項目などが用いられています。

この他にも、紛争時の裁判などの国を別の項だてにする、開発や売買、輸送プロセスのどこの部分をどの名称で呼び、その間の責任はなどを、個別の契約対象によって項建てするものもあります。

 


■1:定義(Definitions)
使用される用語の定義
・契約国が異なること、またたとえば米国内においては、州により異なることから、およその契約にこの項目が存在している
・この部分でさししめす範囲などを、よほど詳細に区分例示などされていることも多くある

■2:表明保証(Representations and Warranties)
・目的物のどの形状や機能などが満足されていれば問題が無く、どういったものは許可されているか等の列挙など
・売買やサービスに関する、売主などの瑕疵担保責任などについて
(それが輸送や点検後のどの部分にかかわる場合には、その経路にかかわるどこの業者などが何割程度なのかといった割り付けなどが有ることもある。(コンテナなどは、封をした後そのまま輸送されるため))
・加工工程や、経路のどこで発生した場合には、一律何割をどちらが等の負担の他にも代替物などの定義などがある場合もある

■3:秘密保持義務(Confidentiality)
・その開示不可あるいは外部に漏れないように、どのレベルあるいはどんな取り扱い範囲を持って情報や技術を扱うかの定義や例示。
・秘密情報そのものの範囲や内容の定義。
・開示して良い範囲の定義や実例。(従業者等の範囲、工場などの所有者や経営母体、生産国や設備による制限等)
・ライセンス等においては、調達その他であってもどんな納入物などの関連した情報までを秘密化して扱うか等。

■4:契約期間(Term)と契約関係の終了(Termination)
契約期間や自動更新の定めとその有効期間。
契約解除事由の場合分け、例示をもった定め。
>不履行または契約違反
>破産、民事再生、会社更生等
>解散や生産
>経営、支配関係等の組織変更
>生産設備や生産数量の確保
>経営状態の一定水準の確保


・契約終了の手続きに、どの程度の予告と期間的な猶予等があるか
・一方的なものかどうか
・どういった手続きを持って、どちらの側から解除されるのか
・どの部分の契約が終わってから、何については効力がどのくらいの期間で残り、販売や在庫扱い等において制約や拘束を受けるのか
またそれにより生産された商品の取り扱いはどうなるのかがこのなかに盛り込まれているものもある(ライセンスなどで比較的確実に、契約終了まで運営されるもの。また仕掛品返却廃棄規定等)


■5:救済(Remedies)
・損害賠償請求、差止請求など契約違反があった場合に,被害当事者が採ることのできる手続きなどについての定義


■6:不可抗力(Force Majeure)
・戦争や事故などにおいての遅延や数量の不完全さにつき、求償はどうなるのか
・戦争や事故などにおいての保険等でどの程度をカバーさせるかなど
・また不可抗力起因においては、双方責任を負わない
・追加で発生した処分費用等手数料の負担割合定義や生産物放棄等
などの表示が多い


■7:譲渡(Assignment)
・契約上の権利や義務を第三者に譲渡を認めるかどうか
・認める場合の条件等の定義(開示先や譲渡先の詳細な制限)
・ライセンスの分限的再付与など定義されているものも多い


■8:税金及び支払(Tax and Payment)
・各国(或いは州をまたいで)の国際取引においては、課税に関する共通認識や、課税回避と看做された場合の取り扱いなどにつき、共通認識があるとは言い切れず、また、当該国で生産や売買を行うに当たり、課税に関しての一時的な懲罰的支払いや、税額の部分供託その他などが発生した際、どのように負担されるかなど
・源泉徴収分
・支払いがネット(税引後)ベースかグロス(税引前)ベースか
・時期など

■9:権利の不放棄(No-Waiver)
・一度の債務やその他責任の不履行を許したからと言って、同様の債務不履行や他の債務不履行を容認するわけではないことを等の定義
地域や準拠法によっては、商慣行上も前対応を受けて同様に扱うという地域もあるので、改めてうたうとともに、同様の不履行などの都度、仮に権利放棄する場合は書面を交わすなど、その部分を特別に許可している形であらわすものもある


■10:通知(Notices)
・契約の相手方当事者への郵送その他での通知方法
・通知の宛先(担当者等)
・通知の効力が発生する時期(受領時点からあるいは発送から何日など)


■11:無効規定の分離可能性条項(Severability)
・契約書上各条項が相互に関連性を持って規定されているものだが、そのそれぞれ条項が分離し, 独立の効力をもち、 仮に一部の条項が無効(void or un enforceable)になっても、その無効が他の条項に影響を与えないことの定義


■12:紛争解決(Dispute Resolution)
・被害当事者が採ることのできる手続きなどについての定義
・和解調停に使用する機関などをあらかじめ定めたもの、
・その解決のため積極的に協力すること、解決に努力すること等などの定義が多い


■13:準拠法(Governing Law)
・どこの国のいつ時点のどの法にに従うこと
・どちらかに改正や、基準として採用する条約や関連法などで新たな展開がある場合などの有効期間や、その際当座どのように扱うかなど、4の契約期間、13の契約の修正の項目などと関連させての表示も多い

■14:完全合意と契約の修正(Entire Agreement and Modification)
・契約が締結されるまで検討期間に、契約当事者間で行われたさまざまな合意は、この契約に集約されて合意され、契約締結までの本書面に記載されていないあらゆる合意は無効であるという条項。
根拠となる法が異なる文化間にあるためというだけではなく、内国間契約でもよく用いられる定義

・また正当な権限を有する代表者が書面で合意しない限り、本契約は修正できず無効であるという定義

■15:免責事項(Disclaimer)と 責任の制限(Limitation of Liability)
・一般の輸送や管理状態においての生産や出荷輸送、サービス提供を越えたものにつき責任を持たないこと
・その賠償額や対象など,責任を一定限度に限定する定義(商品代金の限度において等)
などの定義

 

■最後に

日本でも、業務標準化などが多く叫ばれていた時代に、元の日本語の典型的な契約書に、修正関連の事項などを盛り込んだ一体のものなどがつくられていたこともありました。

 

また、現在でも、日本企業で、多く海外契約などを生産やライセンス他で扱っている企業の契約書においては、統一性を出すため(今後、生産拠点などを海外移転等するときを視野に入れた、準備等を兼ねて)これらの詳細な規定ににた項目から、構成されて契約書が使われていることも、多く存在します。

 

他に、通報義務や、各国での発生した事故情報その他の共有などの細部の取り決めなど、実際の契約書上では、100単位の異なる項目が「契約時点でのインデックス的に」1冊にといったケースなども多く有り、ものによっては確認や検討に、専門家でも困難をきわめます。

 

こういった点で、準拠法、守秘義務など部分的に分冊化されていたり、改正等にあわせて部分的に差し替え、変更点などを綴っていく、日本的な契約書が目に優しく、かつ差し替えられていない部分はあらためての確認が不要なことがわかりやすいのでありがたいといった印象を持たれる方も多くあります。

 

この英文タイプで分厚い契約書などを持ち込まれることを、間違い探しや他国間契約書ファイト…としてとらえておられる実務家も、社会には多く存在しています。