日本一の弁護士を目指す法律系ブログ

法律や昨今の弁護士事情について勝手気ままに書き綴る弁護士を目指す男のブログだと思う。

当選した候補者が辞退するハメに?!

会社の付き合いや友人知人のつながりで選挙運動に参加する人も多いと思います。選挙運動を手伝ったことがある方なら常識だとは思いますが、知らない方も多いと思うので説明します。

 

選挙運動においては、ウグイス嬢や事務所の事務員をのぞく運動員に日当などの報酬を渡すことを禁止されています。

 

報酬とは、アルバイト代などの現金はもちろん、一定額を超えた食事の提供なども禁止されています。

 

公職選挙法は「選挙運動にお金をかけちゃダメですよ」と定めているんですね。

 

さて、ある現職の代議士が再選をかけて選挙に立候補しました。

 

この候補者、常に選挙カーに若い男女が応援者として同乗しており、さわやかなイメージで街頭演説を繰り返していました。

 

そんななか、選挙カーとは別に活動していた車が交通違反で切符処理されました。運転していたのはこれまた若くさわやかな男性。違反切符には職業の欄があるので、男性は大学生だと判明しました。ここでその大学生が口を滑らせました。

 

「アルバイトの途中なので…」

 

この情報はすぐさま警察署の刑事に伝えられました。運動員がアルバイトだとすれば、報酬を与えて選挙運動をさせる「運動員買収」に該当します。秘密裏に内偵がおこなわれ、その候補者についている若い運動員はほとんどが大学生とフリーターで、いずれも日当1万円程度を約束されていました。

 

徹底した尾行と内偵で、アルバイト運動員の全員の素性が判明し、ついに投票日を迎えました。この候補者はみごと再選を果たし、選挙事務所は歓喜に湧いていました。

 

投票日の翌日、警察はアルバイト運動員全員を一斉に取調べました。それぞれがコンタクトを取れないように、色々な警察署や警察施設にバラバラに呼び出し、口裏合わせをさせない方法をとりました。

 

ほぼ全員が「え?これって違法なの?!」と面喰らう状況。全員ふつうの大学生やフリーターなどの若い男女ですから、取調べのプレッシャーと「捕まるかもしれない!」という恐怖で、女性の1人が過呼吸症候群になり倒れる事態にまで…

 

アルバイト運動員全員の供述から、アルバイトを主導したのは選挙事務所の三役の1人「出納責任者」であることが判明しました。この役職にある者が選挙運動で違反を犯した場合、候補者が「連座制」によって当選を取り消されます。


警察は出納責任者とほかの事務員責任者を逮捕しましたが、いずれも「アルバイト代を支払ったらいけないことは知らなかった。」と故意を否認しました。

 

そもそも過失は免除されるなどいう規定がないので意味はありませんが、長年の代議士事務所の責任者がそんな基本的なことを知らないわけもありません。

 

さらに、代議士の事務所は「警察は不当な逮捕をした。早急に釈放せよ!」なんて署名活動まで始めました。

 

そんな関係のない外野の声なんてお構いなしです。

言ってみれば「盗人猛々しい」でしょ?

選挙運動で違反して当選しておいて、市民の代表の身を守りたいばかりに警察がおかしいなんて批判するのは。

 

数日後、代議士は当選辞退を表明しました。抵抗に意味はないと諦めたわけではありません。連座制で当選を取り消されると、5年間は同一選挙区で立候補ができなくなります。

 

連座制で当選を取り消されるよりも、辞退して4年後に備えるほうが得策なのです。

 

高度な判断ではあったと思いますが、どちらが賢いかは明らかですね。いずれにしても、せっかくお金をかけて当選しても違反があれば取り消されたり、自ら辞退をするハメにもなりかねません。

 

選挙運動に参加する際は「報酬は違反!」ということを頭に入れてお手伝いをしましょう。