日本一の弁護士を目指す法律系ブログ

法律や昨今の弁護士事情について勝手気ままに書き綴る弁護士を目指す男のブログだと思う。

無罪を呼んだ被害者の死

大工をしていた高齢の男性がいました。

 

男性は、知人の男から「アパートを買わないか?」と勧められました。

 

男によるとそのアパートは、オーナーが売りたがっている『オーナーチェンジ物件』なので、購入すれば即家賃収入を得られるとのことでした。男性は将来的に収入を得られる投資物件の購入を考えていたので、ちょうど良い機会だと思い仲介を称していた男に現金700万円を渡しました。

 

この話が、本当のオーナーが全く知らない嘘の話とも知らずに…です。

 

男性からの告訴を受けて警察は詐欺事件として捜査を開始しました。捜査を進めるうちに、犯人の男がプロの詐欺師であることが判明しました。過去、男が犯した罪はほとんどが詐欺事件。

 

しかも不動産を利用する手口が多く、なかには宗教法人の役員に就任して寺院を乗っ取り土地を売却して巨額を得た事件までありました。さらに、過去の事件の被害者のうち複数の人が、生活に追い詰められて自殺までしていました。


間接的に殺人を犯しているといっても過言ではない男でした。

 

告訴を受けた詐欺事件の捜査は続き、犯人の男を逮捕する直前という段階になったところで、事件は急展開を迎えました。被害者の男性が突然亡くなってしまったのです。炎天下で大工仕事をして、帰宅した時に「頭痛がする。」と言い出し、そのまま倒れて他界したとのことでした。

 

男性の無念を晴らすべく犯人を逮捕しましたが、被害者の男性が亡くなっていることは秘密にしていました。犯人が「死人に口なし」の供述を始めることを防ぐためでした。
「私は投資金としてお金を預かっただけで、運用に失敗したからお金はなくなった。」などと嘘をならべ立て、その全てが嘘であることも証拠を揃えました。

 

犯人否認のまま、すべての書類を送検。

 

検察が起訴し公判が行われましたが、何度かの公判を経て出された結論は「無罪」でした。理由は「被害者が死亡し、犯人が否認している事実の反証を得ることができないから」でした。

 

口惜しいとしか言いようがなく、犯人は無罪放免。男性は、忙しい仕事の中でも詐欺の被害に頭を悩ませて苦しみ、ストレスも重なって亡くなったと思えば、この被害者の男性も犯人に殺されたようなものでした。

 

その後、犯人はまったく別の窃盗事件で逮捕されました。

 

悪人は反省しないのだなと落胆すると同時に、少しでも男性の無念は晴らされたかと思う一件でした。