あなただけに」の儲け話は詐欺!
なぜ私に「ここだけの秘密」や「あなたにしか教えない儲け話」が集まったのかは考えもしなかった。
ある60歳代の女性の言葉です。
この女性は、突然A社を名乗る男からの電話で「あなたにしか教えない未公開株がある。」と儲け話を持ちかけられました。
男は「実は、A社名義では買えない未公開株なので、あなたの名義で買って欲しい。そうすればB社が10倍の値段で買い取ってくれる。」と説明。
女性は夫を亡くして不動産や預金など5,000万以上を相続しており、お金には困っていませんでしたが、子どもや孫に残すことができるなら増やしたほうが良いと考えました。
はじめに500万円を振り込んで、その後は「増資したほうが良い。」と口車に乗せられたり「あと100口を追加しないと換金できない決まりになっている。」と騙されたりしながら、気づいた時には身内に借金までして合計6,000万円を詐欺グループに振り込んでいました。
警察に相談に来たのは、身内の男性に連れられて半ば強引にでした。
身内の男性が、遺産を相続しているはずなのにお金の工面に苦しんでいる様子を察知して詐欺に気付いたのです。
はじめのうちは、警察官から「この話は詐欺ですよ。」と説得されても「あちらの男性のほうが、あなたたちよりも誠実な感じでしたよ?警察のほうが信用できません。」とすっかり詐欺グループに肩入れしていました。
あまりにも妄信的に詐欺グループのことを信じ込んでいて、警察官が疑われる始末。
本人の娘も含めた身内の方々が涙ながらに訴えて、ようやく事態を飲み込める状態になりました。
女性の協力を得て、犯人グループのうち1人がわざわざ現金を受け取りにきました。
『騙されたふり作戦』です。
受け取り役は初老の男で、詐欺の現行犯として逮捕したところ「割のいいアルバイトだ。」と聞かされて派遣されていたことが分かりました。
この男から芋づる式にグループのメンバーが判明し、わずか二ヶ月たらずで6人ものメンバーを逮捕しました。
逮捕されたメンバーの中には、詐欺の黒幕として裏で主導していた暴力団員もいました。
メンバーの逮捕後も女性に対する事情聴取は続きましたが、女性は「暴力団員までもいる人たちを『いい人だ』なんて信じ込み、遺産を注ぎ込んでしまった自分が恥ずかしい。」とさらに涙を流しました。
詐欺グループは黒幕まで検挙に至りましたが、訴訟を起こしても取り返せた金額は被害額に遠く及ばない少額でした。
自分にだけ、不思議な儲け話が舞い込むことなんてあり得ません。
自分がどれだけの大物投資家なのかと錯覚しなければ、こんな被害にも遭わないのではないでしょうか?