日本一の弁護士を目指す法律系ブログ

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親族に向けての中小企業等の承継のための贈与相続

高齢になり、また子孫などの成長、社会での活躍などを受けて相続贈与を考え始めたかたもあるかもしれません。

 

中小企業等を親族に承継するためには、経営など管理能力部分の継承、業務にかかる技能や知識部分、顧客や関係先の人間関係承継の他、起業構成員やその家族をひろく抱えて支えていくため、企業を安定的に移行させてかつ当面維持させるための経済面での様々な準備も必要となります。

 

もとより、非上場・中小企業等の場合には、その資金調達は、物件抵当などを除けば、技能や業務プランなど中短期的な企業の提供物に基づく市場調達や、あるいは経営役員たちのカオ・人物による信用融資部分が多くあり、事業承継にともなう役員などの顔ぶれ変化などが、急激かつ直接に、組織の資金力に影響を与えることも少なくありません。

 

また万が一の時の登記等事務手数料発生などはいつ起こるかわからす、ある程度の資金の余裕は、広く対象となる可能性のある親族に持たせておく必要があります。

 

そこで今回は、継承時に安定性をもって、家族間での移行がはかれるように、企業承継のための相続の資金資産部分を承継予定の親族に、いかに税制上有利に進めることができるかについて考えてみます。


■株式、役員の個人資産部分の贈与

相続の中でも最も効果的に行えるというのがこの部分です。実際に、組織を承継する際には、これまでの役員などの改選や入れ替えなどが行われる場合、また、過去に在籍した役員などの持つ株式などを、この機会に集約することで、安定性などを増したり取り扱いを容易にしたいといった事例も見受けられます。

 

また増資などを繰り返している間、役員個人の信用により出資をしていた層などもあるため、役員変更時に対応などを迫られた場合に利用できる十分な資金を用意しておく必要があることもあります。

 

親族に特定の資産を相続させたい場合、あるいは相続に関連して事業関連不動産や機材等の相続手続きや、長年の利用等の際に所有者が複数にまたがっている物件などの統合他や納税などで多額の費用発生が見込まれるケースは考えている以上に多くあります。

 

生前贈与適用での控除額などを視野に入れながら、生前贈与で毎年すこしずつ資金として移転しておくなどが対策としてはよく用いられています。

 

例えば、基礎控除では110万円までが非課税で、基礎控除後の200万円までは10%の贈与税で済みます。毎年110万円を20年間贈与すれば2200万円が非課税で、また310万円ずつであれば6200万円が単純に計算すれば400万円の税額負担だけで移転できることになります。

 

但し、毎年同じような形で振り込みなどを行っていたとなると、税務署では税金逃れの継続的な贈与=本来贈与したかった金額を分割して移転させたものであるとみなされることも有ります。

 

毎年の課税制度「暦年課税制度」内のものなので、贈与契約書を贈与の都度作成する、あるいは310万円等その他の税率区分での贈与を行いその区分に従い納税する等の方法もあります。

 

またこの贈与に際しては、自身や家族の死亡相続時に、居住にかかる物件などの個人資産の相続やその親族との相続関連で、親族間に支払う資金面などを考慮に入れる必要もあります。死亡相続では登記抵当などの手続き上の手数料や、相続前の抵当権処理など、さまざまの費用発生の可能性もあります。

 

また死亡相続を視野に入れなくとも、同様に、分割や売却などを行わせたくない特定物件の場合には、「万が一の時に特定の生活関連物件などはだれに相続させる」といったことを親族間に日頃より周知させること、また相続時には手続きが煩雑になりますが、権利関係の整備により物件自体の散逸や安易な売却などしづらい構造にすることも一案です。

 

遺言で残すことができたからと言って、必ずしもその通りに執行されるとは限らないためその執行に際し、すこしでも確実性を持たせるために常時顧問弁護士などをお願いしておくことで紛争を防止しておきたいものです。


■役員の「当該企業への出資部分の設備等」の贈与

個人で出資した分につき、帳簿上あいまいになっていることなどが多いのも中小企業特有です。相続を考え始めた時点で、個人で差し入れていた資金などについて、ある程度個人分と、企業に属するものをしっかりと書類や登記等をもって、確実化させておく必要もあります。

 

場合によっては手数料等も発生し、また図面類などや測量などが発生することもあるため、このあたりもいざというときよりは前もって準備しておきたいものです。


■もし承継のために急に贈与が必要となった場合

65歳以上の親から20歳以上の子に向けての贈与の場合では、「相続時精算課税制度」の適用も考えられます。

 

これは本制度を選択した贈与者ごとに、1年間に贈与を受けた財産の価額の合計金額から 2,500万円の特別控除額を控除した残額に対してのみ贈与税がかかります。また、単年度ではなく、複数年においてそのものからの贈与の総額が2500万円に達するまでの間、毎年控除が可能という制度です。 その金額に達した贈与時の所属する年に贈与税として納付し、贈与者が死亡した際には、贈与財産を含めて合計の相続分を再度計算し、この相続税といったん支払っていた贈与税との差額を支払う或いは還付という流れとなります。

 

「相続時精算課税制度」を一度選択してしまうと、従来の「暦年課税制度」には戻せないため注意が必要です。(相続税法 第二章第三節)


■おわりに
近年の各省庁による、段階準備的な法改正を受けて、税制面などでは、各省庁の関連法上でも「各業種に於ける事業承継を円滑化するための様々な制度整備」などが進められています。

 

こちらの他にもたとえば、居住用個人資産他を含めた相続に際しては、租税特別措置法以下の住宅資金特別控除等を利用して、相続時精算課税制度分の枠外で、更に生前贈与等として広くとることも可能です。

 

また本年は、承継等にとくに事務などの業務が煩雑化する、法人の資金面に関しても、法人に付与されたナンバーなどをもって、各企業や金融機関と行政との手続きが、統一的に一貫性を持ってとらえやすい形となりました。

 

資産全体について、見やすくなったことで課税対象などとしての把握が可能となったということでもあります。余裕を持った確かな準備が、これまで以上に必要です。