日本一の弁護士を目指す法律系ブログ

法律や昨今の弁護士事情について勝手気ままに書き綴る弁護士を目指す男のブログだと思う。

「怪しいと思った」はダメ!詐欺の構成要件

「いやぁ、最初から怪しいと思ってたんですけどね」

 

詐欺被害者から聞かれる最も多い言葉です。

 

詐欺の被害者は、少なからず「騙された自分が恥ずかしい」という気持ちを持っています。うまい話に乗っかってみたり、かわいそうな話に同情した自分のことを、いかに相手が警察官であろうが「この人は騙された」という目で見られたくはないものです。

 

自然とそういった言い訳をしてしまうのでしょうが、しかし最初から怪しむ気持ちがあれば詐欺にはひっかかりません。

 

もし、これから詐欺の相談や届出を考えている人がいればこの点には注意が必要です。全ての犯罪には「構成要件」というものがあります。

 

法学部で勉強をしていないと刑法犯の構成要件なんて無縁ですが、簡単にいえば「犯罪が成立する条件」みたいなもの。

 

詐欺の構成要件は、下記のとおりです。

 

1.他人に対して虚偽の事実を伝えて騙す(欺罔※ぎもう)
2.虚偽の事実を信じ込む(錯誤)
3.錯誤に陥って金銭などを財産を処分する(処分行為)の3点で成り立っています。3点の全てが揃ってはじめて詐欺が成立するので、たとえば1と2が成立しても3が成立しない場合は「詐欺未遂」となります。

もう少し分かりやすく例示すると、嘘に騙されて信じ込んでも、渡すお金が手元になかったので騙し取られなかったとすれば詐欺未遂になる、ということです。

 

今回の話で大事なのは、この構成要件の2です。

 

虚偽の事実を信じ込むことを「錯誤」と呼び、その状態の人を「錯誤に陥った」と呼びます。錯誤に陥らない限り、騙されたとは言えません。

 

例えば、すごく儲けがある美味い話を持ちかけられたとします。この儲け話に乗るためには100万円を出資しないといけません。

 

「へぇ、いい話じゃないか!」と信じ込んで100万円を渡すのは当然詐欺です。

 

しかし、その話を怪しんで「いや、そんな美味い話なんてあるわけないだろ。でも、ドブに捨てたと思って出資はしてやるよ。」と話は信用せずに100万円を渡したとすれば…

 

この場合は錯誤に陥ったとは言えない状態になってしまい、現金を渡したにもかかわらず詐欺が成立しないことになります。はじめの話に戻りますが、恥ずかしくて「最初から怪しいと思っていた」なんて言っていると、この2の錯誤が抜けた状態になってしまいます。

 

嘘を見抜いていたがお金を渡したと言うのであれば、詐欺は成立しないので民事的に返済を請求するほかなくなってしまいます。

 

「錯誤が抜けているので詐欺が成立しない」というケースはあまり実例がありません。
だって「いやいや、騙されたんでしょ?」と説き伏せられるのだから。

 

しかし、相手が警察官ではなく、これが訴訟の場などになってしまうと大事態です。
裁判官は「え?騙されたんじゃなかったの??」となり、不利な判決を受ける危険が大きくなります。

 

詐欺の相談をする時は、恥ずかしがらずに「まんまと騙されました」と騙された事実を認めましょう。

全額を盗まない泥棒?〜犯罪白書

みなさん、おはようございます。

 

先日、元刑事の友人に話しを聞きました。

 

窃盗犯、いわゆる泥棒には『癖』があるそうです。たとえば空き家しか狙わない、深夜の家人が寝ているところを狙う、窓を割る、窓は割らずにカギのかかっていない場所を探す、という具合です。

 

不思議なことに、窃盗犯は自分が成功したことがある手口で犯行を続けるそうです。いろいろな手口をミックスせずに、常に自分なりの手口を使うのです。この窃盗犯の癖を分析するのが窃盗犯刑事。

 

空き巣の現場を見れば誰の手口か分かるというのですから、彼らも窃盗犯に負けない職人集団ですね。

 

さて、ある町で空き巣の被害が連続しました。

 

手口を分析した結果、その町に住む前科5犯の窃盗犯Mが浮上。警察はMを徹底マークし、現行犯逮捕する体制を整えました。見事、勘は的中してカギがかかっていない窓から侵入したMを現行犯逮捕しました。

 

Mは逮捕後、これまでに空き巣をした家の全てを覚えていました。これも窃盗犯特有のことですが、100件あろうが200件あろうが、窃盗犯は警察が知らない犯行までも自供します。その時に白状しておかないと、刑が終了してから発覚すれば時効内であれば検挙されてしまうからです。

 

さて、Mの自供によってこれまでに警察が認知していない被害も多数発覚しました。
その家を訪ねるとまず言われるのが「え?ウチは被害に遭っていませんよ?」。
これもMの「上手い」ところです。

 

Mだけの特徴ではないのですが、窃盗犯には全額を盗まない手口の者がいます。たとえば財布の中に5万円入っていれば、3万円だけ盗んで2万円は残す、という手口です。

 

そうすれば、まず「なんで財布の中身が減っているのだろう?」と思いますが、疑われるのは家族です。奥さんの財布から盗めば「ちょっと、アンタ!お金とったでしょ?」とご主人が疑われるのは必至。

 

ご主人が否定すれば今度は夫婦揃って「息子だろうか?」と悩み、結局はウヤムヤに。
もし泥棒が入ったのだとしても、どうせ盗みに入るなら財布ごと全部持っていくだろうから…と考えてしまうのです。

 

こうして発覚をしないように、または発覚が遅れるように財布の中身を全額盗まない窃盗の手口もあることを覚えておいてください。


もし、明日の朝めざめて財布の中身が減っていれば、家族を疑う前に家の中で戸締りをしていなかった場所がないかを思い返しましょう。戸締りをしていない場所があれば、その周辺には近づかずに警察に通報を。

 

指紋や足跡が残っている可能性が大です。

情報リソース取扱いにおける法的基礎知識と技術的基礎知識

かつてオフィス内では、テキストによる情報漏れなどが心配される物品としては、手書きの原紙や個人メモそのものの他には、カーボン複写紙や、タイプライターのインクリボン、フロッピーやCDR等ワープロや個人用コンピュータの外部書き出しメディアなどと限られており、比較的管理が容易なものでした。

 

この20年ほどの技術革新における利便性追及から、オフィスには非常に電子機器が増え、その動作の中で通常メンテナンスでは見ることもないような位置にですら、機材の設計や機構を知りえた人などにとっては簡単に情報が取り出せたり、また盗み見たり、摂取したりといったことも容易に行えるようにもなりました。

 

そこで今回は、自社スタッフ以外も多く往来や利用する、企業内外における情報リソースの基礎知識と、そのリソース取扱いにおける法的な適用範囲等の基礎知識について、ご紹介します。


■情報リソース取扱いにおける機器面の基礎知識

文字そのものの廃棄や作業ミスなどの際に情報漏れが発生する他にも、データそのものを人やウイルス感染により盗み見持ち出すもの、事業所が利用しているデータ保管サービス業者のストレージ(データ記録機材その他)や、データ消去後に廃棄や売却したコンピュータなどの機材、通信経路から漏れてしまうもの、電線などの電位等の変異からデータを盗み取るもの、その事業所が使用している機材や環境ではなくデータを送受信される先の事業所でのデータ窃取、画面などをアプリケーションや携帯端末などで撮影やスキャンするものと送信その他などがあります。


■情報リソース取扱いにおける法的基礎知識
これらの情報機器の特性や、オフィスレイアウトでの、従業員やゲストの移動範囲等や、情報を各機器間でやり取りする方法、また契約先や共同開発先、外部常駐先などでの取り扱い情報の内容などによって、それぞれの従業者の区分や取り扱い範囲にもとづき、最低限適切な権限設定を行うとともに、法的留意事項についての教育や、契約などを交わしておく必要があります。

 

情報リソースレベル等に基づいて、研究開発などを行う相手先企業の他に、内容に応じてはその業務従事者各人に、追加での留意事項などの徹底や契約などを交わすケースもありますが、特に厳密な保秘が必要な部門以外では、現在では「ある程度の枠組みを決めつつも、オフィス環境では、両者個々人が”迅速かつ業務に必要なだけリソースを利用”できる」目的のため、後者の対応が一般的です。

 

取り扱い情報により、その適用法令が異なること、求償レベルや金額が莫大となることなども有り、それぞれの従業者の類型に応じた、契約書類などをあるていど前もって定型化しておく、個別の契約により拡充させ、また法人間のみならず、業務に携わる個々人にも対企業あるいは企業内で、書面による同意書や契約書などを事前に交わすところが、現在は多くあります。

 

また廃棄(書類溶解や廃棄処理)や販売、リースなどに携わる購買先などについても、一定の情報漏れなどへの対応が十分かどうかといった作業内容の検討と併せて、書面を交わしておくケースなどもあります。


■情報リソース取扱いにおいて、行ってはならないこと
オフィスで扱う主な情報としては、顧客等の個人や法人情報や、近年話題のものとしては技術や製品サービス情報などがあります。


このうち、情報の取り扱いに関しては、次のようなことが、各法で禁止されています。

・情報の不正取得
情報の不正利用
情報漏えい
情報の目的外利用
第三者への無断提供

 

■万が一情報漏えいが発生した際の適用法

・顧客個人情報:名称の為か、全てのケースにおいて、個人情報保護法が適用されると思われる方も多いようですが、実際には「5000件以上の個人情報をDBなどとして所持し、事業に使用している事業者」に関してが、「個人情報保護法」関連適用によるものとなります。


それ以外、あるいはそれらと重複して、回線その他を通じたアクセスによる持ち出し等に関しては「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」顧客側が実際に漏えいした被害に基づき賠償請求を起こしてくる際の民法、それらを利用したクレジットカード決済や売買などの被害の場合は刑法の「電子計算機使用詐欺罪、(第246条の2)」などの適用があります。


また不正に取得されたデータだと知りつつ、それを売買した者に対する処罰規定や、海外サーバなどに存在する営業秘密や技術情報類などの不正取得行為や営業秘密侵害の未遂行為そのものなどが、2015年の不正競争防止法改正により、処罰対象に加えられました。(###一部は2015秋に施行予定)

 

・データ改ざんやなりすまし:データ持ち出しや業務妨害目的の回線経由上攻撃による人為的ツール設定などの場合、DoS攻撃などによるメモリ他機材損壊などの場合、「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」「刑法の電子計算機損壊等業務妨害罪」(第234条の2)。

 

このうち「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」に関しては、回線等通信経由のものに限られますが、もっとも新しく広い適用範囲や類型を想定した法整備であったこと、また近年の情報漏えいからのさらなる事件や売買などでの多くの報道や賠償案件を受けて、各法の整備が進められているところです。(これまで社内発信のサービス運営サーバなどにおいて、外部からのウイルスや、外部データ持ち去りや改ざんや複製による詐欺や窃盗行為などを容易にするツールなどの社内設定や設置については、作業が社内などにとどまっていれば、法的な適用類型の判断が難しかったものなどがあります)

 

・業務情報持ち出し:「不正競争防止法」の2009、2015年改正においては、これまでは持ち出した企業内の技術商品顧客情報等といったものに対する、外部利用での損害等の認定面において、ケースに応じてあらゆる法適用を検討するといった立証や確認困難な面が多かったことを踏まえ、「勝手に複製などを行う」「持ち出したデータを持っているだけで、それが罪になる」といった適用を視野に入れた改正が行われています。(###一部は2015秋に施行予定)

 

また、近年、情報漏えいと売買、それら行為に対する、高額の成功報酬制度などがあったことなどを踏まえ、刑事民事各法での罰金額ひきあげ、海外持ち出しなど関連の重罰化、犯罪収益の没収規定、それら漏えい情報を基にした商品などの輸入差し止め、営業秘密漏えいによる生産品の”推定”規定(設計データなどが該当、販売マニュアルなどの非生産系営業秘密は対象外)などが、民事刑事各法で整備されつつあります。


■まとめ
いかがでしたか?

基礎的な事柄ばかりですが、これらの分野の法的整備は、近年の「IT企業の顧客情報流出や詐取事件」や「大手企業の顧客や技術情報の大型流出事件」などをうけ、各法において、急速に改正整備が進んでいます。

 

情報流出原因や、その過程、関与者や、大きな損失の発生した事象時点などにより、事件として扱える部分の範囲や適用などを見極める作業は、困難を極めます。

 

技術革新も急激な分野でもあり、その手法も雨後の竹の子的なものがあるため、これらの分野については、企業法務や経営担当者以外でも、常時新たな情報を入手し、ケーススタディーに努めたいものです。

 

亡くなった人の事業は相続できるのか?

相続というのは亡くなった人の財産を引き継ぐものですが、相続財産としてすぐに連想するのは不動産・株式・現金などです。相続人がこれらのものをそのまま引き継ぐというのは特に問題はありません。

 

では何か事業をしていた人が亡くなった場合には、事業が相続の対象となるのでしょうか。

 

 

事業というと回りくどい言い方ですが、ここでは会社経営のことを意味します。人は自然人というのに対して、会社は法人といい法律で人格が認められた存在です。つまり、会社を経営していた人は自然人であって、法人である会社とは別の存在になります。会社というのは財産ではなくて法律いよって人格を認められたものですから、相続によってそのまま相続人に引き継がれるということはありえないのです。


もっとも会社が所有している不動産や売掛金などの債権、さらには借金もあります。財産と呼べるようなものもあるのですが、それらはあくまでも会社のものなのです。亡くなった人のものとは法律上は言えず、亡くなった人は会社の株式を所有していたにすぎません。

 

もちろん株式は相続人に引き継がれます。このあたりのところは法律に詳しくないと理解しにくいところかもしれませんね。よくある勘違いとしては、亡くなった人が会社の経営者だったら会社のものは何でもかんでも相続できると思ってしまうことです。法律は個人と会社とは完全に分けて考えているということには注意したいですね。


ここまでは会社についての話でしたが、亡くなった人が個人事業主の場合は通常の相続と同じようになります。個人事業主というのは会社組織を持たないで事業を行っている個人のことです。事業をするために所有しているいろいろなものが相続の対象となって、相続人へ引き継がれます。


例えば、土地や建物といった不動産、工場で使う機械や、販売するための商品や原材料などは相続されます。これらはいわゆるプラス財産ですが、マイナス財産を亡くなった人が抱えている場合もあります。

 

典型的な例が借金や売掛金ですが、個人の場合はこれも相続で引き継ぐことになるのが原則です。会社の場合は借金はあくまでも会社のものですが、個人の場合はそういうわけにはいきません。素人感覚でいうと、どっちも事業をしているのだから同じじゃないかと思うでしょうが、法律ではきっちりと扱いが分けられているのです。

 

どんな財産でも相続されるわけではない

人が亡くなると相続が発生するってだれでも知っていますよね。どんな人でも何か財産はあるものですから、亡くなった人の相続人は何か財産は受け継ぐものです。民法では相続が発生するとすべての権利義務を受け継ぐと書いてあるけど、これはあくまでも原則であって例外もあるのです。

 

法律の世界ではこの原則と例外というのが規定されていることがよくあります。原則だけでは通用しない場面があるのですから、それに対処できるように例外を設けているんですね。

 

それで相続の場合は、「被相続人の一身に専属するもの」「祭祀財産」「相続人が固有に取得する権利」は相続人へ引き継がれないと規定されているんです。

 

これは民法の条文に書かれている表現そのままだからわかりにくいと思います。法律の条文は難解な用語を使って表現されているので理解しにくいのです。そこで具体的に説明してみますね。


まず「被相続人の一身に専属するもの」ですが、借地権や借家権などがこれに該当します。例えば家を借りていた人が亡くなったからといって、その相続人が当然にその家に住む権利を引き継げるわけではないのです。

 

亡くなった方と大家さんが家を貸すという契約をしていたにすぎません。土地を借りる権利である借地権も同じです。最高裁判所は借地権や借家権は相続によって当然には引き継げないと判断しています。


たしかに相続人が亡くなった人と別居している場合であれば問題はないのですが、同居している内縁の配偶者(妻や夫)や事実上の養子がいる場合には問題となります。

 

家を借りていた人が亡くなったからといって、同居人を追い出してしまうというのは酷い話ですよね。そこで、例外として住めるようにしようという法律があるのです。それが借地借家法36条で、借地人・借家人の権利義務を引き継ぐことができるとされています。

 

法律というのは形式的に適用されるのが原則ですが、それだけでは困る人が出る場合には救済する方法が設けられているんです。

許せない『労災隠し』には告訴で応戦!

建設業や土木業をしている人なら一度は怪我をしたことがあるでしょう。そんな時、職場から「病院代と給料は出すから労災にしないでくれ。」などと言われる経験をした人も少なくないはずです。

 

ある墓石店で働いていた20歳代の男性が、仕事中に使用していた重機が倒れて足を複雑骨折する怪我を負いました。

 

実際には免許が必要な重機を無免許で運転するよう命令されて、安全に使用する指導もない状態でした。

 

男性は2ヶ月も入院生活を送りましたが、職場の責任者から「労災だとは言うな。元請会社からの仕事がなくなるからな!」と言われ、治療費も給料の補償ももらえませんでした。

 

職場の対応に立腹した男性は法律に明るい知り合いに相談して、告訴状を作成してもらい、労働基準監督署に告訴しました。

 

労働基準監督署は警察と同じく専門的な分野において捜査権を持つ『特別司法警察職員』です。

 


捜査機関は、要件を満たしている告訴は受理しなくてはならず、受理した告訴は必ず送検(法律上は『送付』と明記されている)する義務を負います。仮に捜査中に告訴の取り下げがあっても、捜査機関は送検しなくてはならないのです。

 

 

途中、職場や元請の会社から「告訴は取り下げろ。」と圧力もありましたが、男性は取り下げませんでした。

 

男性が頑なに告訴を取り下げなかったことから「示談金を用意するから告訴を取り下げてくれ。」と元請会社の取締役が家に訪ねて来ましたが、これも男性は断りました。
この男性としては、もはや金銭で片付く話ではなくなっていたのです。

 

毎日働いていた会社からの裏切り、圧力、苦しい生活の中で医療費や生活費を工面してくれた妻や親類への想いが「会社を断罪する。」という強固な意志へと変わっていたのです。


結果、労災隠しで会社は罰を受けました。

 

刑罰よりも痛かったのは「あの会社は労災隠しで罰を受けた」と業界で噂が広まったことでしょう。

 


男性を直接雇っていた会社は下請けの小さな会社だったので、労災隠しの噂が広まったことが大打撃になり仕事の依頼が激減し、社長は逃亡生活を送るようになりました。
元請の会社も、ホームページに「労災隠しをしたのですか?」などと書き込まれ、収束作業に翻弄されていました。

 

 

単に労働基準監督署に相談した程度では「捜査」ではなく「調査」で終わり、処罰に至らないこともあります。

 

労働基準監督署は司法と行政の両面的な性格を持ち、指導を行う立場からどちらかと言えば行政的な役割が強い機関です。

 


相談程度では「補償もされるようだし、もういいんじゃないの?」と仲介されて、なだめられることもしばしばです。

 


悪質な会社を断罪するには、捜査機関の力を発動させる告訴が非常に有効だと言えるでしょう。

当選した候補者が辞退するハメに?!

会社の付き合いや友人知人のつながりで選挙運動に参加する人も多いと思います。選挙運動を手伝ったことがある方なら常識だとは思いますが、知らない方も多いと思うので説明します。

 

選挙運動においては、ウグイス嬢や事務所の事務員をのぞく運動員に日当などの報酬を渡すことを禁止されています。

 

報酬とは、アルバイト代などの現金はもちろん、一定額を超えた食事の提供なども禁止されています。

 

公職選挙法は「選挙運動にお金をかけちゃダメですよ」と定めているんですね。

 

さて、ある現職の代議士が再選をかけて選挙に立候補しました。

 

この候補者、常に選挙カーに若い男女が応援者として同乗しており、さわやかなイメージで街頭演説を繰り返していました。

 

そんななか、選挙カーとは別に活動していた車が交通違反で切符処理されました。運転していたのはこれまた若くさわやかな男性。違反切符には職業の欄があるので、男性は大学生だと判明しました。ここでその大学生が口を滑らせました。

 

「アルバイトの途中なので…」

 

この情報はすぐさま警察署の刑事に伝えられました。運動員がアルバイトだとすれば、報酬を与えて選挙運動をさせる「運動員買収」に該当します。秘密裏に内偵がおこなわれ、その候補者についている若い運動員はほとんどが大学生とフリーターで、いずれも日当1万円程度を約束されていました。

 

徹底した尾行と内偵で、アルバイト運動員の全員の素性が判明し、ついに投票日を迎えました。この候補者はみごと再選を果たし、選挙事務所は歓喜に湧いていました。

 

投票日の翌日、警察はアルバイト運動員全員を一斉に取調べました。それぞれがコンタクトを取れないように、色々な警察署や警察施設にバラバラに呼び出し、口裏合わせをさせない方法をとりました。

 

ほぼ全員が「え?これって違法なの?!」と面喰らう状況。全員ふつうの大学生やフリーターなどの若い男女ですから、取調べのプレッシャーと「捕まるかもしれない!」という恐怖で、女性の1人が過呼吸症候群になり倒れる事態にまで…

 

アルバイト運動員全員の供述から、アルバイトを主導したのは選挙事務所の三役の1人「出納責任者」であることが判明しました。この役職にある者が選挙運動で違反を犯した場合、候補者が「連座制」によって当選を取り消されます。


警察は出納責任者とほかの事務員責任者を逮捕しましたが、いずれも「アルバイト代を支払ったらいけないことは知らなかった。」と故意を否認しました。

 

そもそも過失は免除されるなどいう規定がないので意味はありませんが、長年の代議士事務所の責任者がそんな基本的なことを知らないわけもありません。

 

さらに、代議士の事務所は「警察は不当な逮捕をした。早急に釈放せよ!」なんて署名活動まで始めました。

 

そんな関係のない外野の声なんてお構いなしです。

言ってみれば「盗人猛々しい」でしょ?

選挙運動で違反して当選しておいて、市民の代表の身を守りたいばかりに警察がおかしいなんて批判するのは。

 

数日後、代議士は当選辞退を表明しました。抵抗に意味はないと諦めたわけではありません。連座制で当選を取り消されると、5年間は同一選挙区で立候補ができなくなります。

 

連座制で当選を取り消されるよりも、辞退して4年後に備えるほうが得策なのです。

 

高度な判断ではあったと思いますが、どちらが賢いかは明らかですね。いずれにしても、せっかくお金をかけて当選しても違反があれば取り消されたり、自ら辞退をするハメにもなりかねません。

 

選挙運動に参加する際は「報酬は違反!」ということを頭に入れてお手伝いをしましょう。